PDハウスのやばい不正請求の後、会社・スタッフ・入居者はどうなる?

パーキンソン病専門の有料老人ホーム「PDハウス」で発覚した、28億円超の不正請求。訪問看護の水増しや虚偽の実施記録などが次々と報じられ、信頼されてきた施設の運営会社・サンウェルズは大きな岐路に立たされています。東京証券取引所からは上場契約違約金の支払いと1年以内の再審査が命じられ、上場廃止の可能性も。この記事では、事件の全貌とともに、今後会社の経営、職員の雇用や待遇、そして入居者の生活やサービスの変化にどのような影響が及ぶのかを徹底検証します。

PDハウスとは?

「PDハウス」は、株式会社サンウェルズが運営するパーキンソン病専門の有料老人ホームで、全国に約40施設を展開しています。同施設は、神経内科専門医との連携による訪問診療や特化したリハビリプログラム、24時間体制の看護サポートを提供し、パーキンソン病患者のQOL(生活の質)向上を目指しています。月額利用料は13.1万〜21.2万円程度で、初期費用は約10万円とされています。

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医療介護業界ではPDハウスの不正疑いはもともとあったが不正請求が明るみに

2025年にサンウェルズによる診療報酬の不正請求問題が発覚しました。同社は、訪問看護の実施時間を実際よりも長く記録したり、1人での訪問を複数人で行ったように装うなどして、約28億円を不正に請求していたとされています。

また、入居者1人の紹介に対し、100万円の紹介料を支払っていたことも明らかになりました。

難病患者に対する訪問介護は自己負担なく必要に応じて提供できるため、不正に過剰提供しようとすればいくらでもできることはみんな知っていることではありますが、倫理的に行ってこなかったものです。このような難病患者は、倫理観や業界で守ってきたルールを無視すればドル箱ですが、サンウェルズの経営者は金のためにやってしまったのです。さらに、メディアが不正の内容を報じていますが、会社としてはどんな不正があったかについての詳細を十分に説明は行っていません。

遡ること2024年9月に、サンウェルズの不正請求疑いが内部告発され、その内容を共同通信社が報道しました。数日で会社は「報道は嘘だ、そんなこと一切ない」とIR(投資家への情報開示)を出したのです。

非常に印象的だったので引用して掲載しますが、ここで大嘘をついてしまったので今になって不正の説明なんてできなくなってしまいましたよね。

共同通信社における記事について

昨日、共同通信社の記事において当社が運営する施設で過剰訪問看護及び、保険の不正
請求が存在するという旨の記事が公開されておりますが、そのような事実は一切ないこと
をお知らせいたします。
また、記事の見出し、ならびに記事に記載されている事実につい
て、法的な根拠なく報道しており、当社の信用を毀損していることから、訴訟を含めて法
的措置を検討しております。
当社はパーキンソン病専門の介護施設PDハウス(以下PDハウス)を運営しており、PDハウ
スにおいては、パーキンソン病の中でもホーン・ヤール重症度分類1~5の内3度以上の
重度な患者様を中心にご入居いただいております。PDハウス内で実施される訪問看護にお
いては患者様の各主治医からの訪問看護指示書の内容を基に計画書を作成し訪問看護を実
施しております。また、全国でPDハウスを運営する中で各自治体によって細かな取り決め
があり、当社としては、厚生局に都度確認を行いながら訪問看護を行っております。加え
て、弊社内では複数の管理体制を設けており、今回の報道のように属人の判断で逸脱した
行為を行った事例があった場合は算定基準を満たしていないものとして保険請求を行わな
い、若しくは事後に発覚した場合は保険料の返還を行っております。
当社としましては、本件において施設運営並びに業務の透明性を確保する為、至急、厚
生局含め関係各所からの調査を依頼することを検討しております。
今回の報道により、入居者様、ご家族様をはじめ株主・投資家の皆様、取引先及び関係
各社の皆さま方にご心配をお掛けしておりますことを深くお詫び申し上げるとともに、引
き続き、公正・安全な役務提供に努めて参りますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

2024年9月3日 共同通信社における記事について
会社名 株式会社サンウェルズ
代表者名 代表取締役社長 苗代 亮達

サンウェルズの対応としては、この段階で「一切ない」などと言わず、調査しますだけにしておけばここまで状況が深刻になる前に何かしらできたかもしれませんが、どんどん新規施設を作って、勢いでいけるところまでいってしまおうという姿勢を崩さなかったことも印象的でした。

2025年5月の状況としては、これらの問題により、サンウェルズは東京証券取引所から上場契約違約金6240万円の支払いを求められ、2026年4月までに上場維持のための再審査を受けることとなりました。審査の結果次第では、上場廃止となる可能性もあります。

PDハウス(サンウェルズ)の職員はどうなるのか?

職員に関しては、これまでのような高水準の給与が維持されるか不透明であり、業務内容の見直しや再教育が求められる可能性があります。入居者に対しても、これまで提供されていた訪問看護サービスが見直され、必要最小限のサービス提供となる可能性があります。

高収入が得られるということと、会社から不正ではないということを無理くり教育を受けて不正を続けてきた職員については、どこまで良心が許すかで勤務を継続するか転職するか迫られることになるかと思います。介護医療の現場の人材は、制度や法的な面に疎く、「患者さんのため」という言葉で不正かどうかも知らないで働いてきた人もいることと思いますので、サンウェルズ社内で本当に再発防止策を講じるとしたら、職員たちも今までの不正とこれからは普通の頻度でのサービス提供になることからPDハウスにこだわる必要もなくなり徐々に離職も増える可能性があります。

入居者はどうなる?サービス内容の見直しと将来の不安

ここまでは事実に基づいた内容でしたが、ここから先は今までのことを踏まえての予測です。

今回の不正請求問題によって、PDハウスに入居している利用者やその家族にとっても影響は避けられない状況となっています。

訪問看護サービスの提供量が見直される可能性

これまでPDハウスでは、医師の指示書に基づいて、1日複数回の訪問看護を行う体制が整えられているとしていました。
実際にはその一部が提供されていなかったとされており、不正が発覚した以上、今後は本当に必要とされる最小限の看護しか提供されなくなる可能性が高いと考えられます。

つまり、これまで「安心感」として提供されていた頻回な看護サポートが減ることで、入居者本人の体調管理やご家族の安心感にも影響を与えることが想定されます。

今後の費用の変化もあり得る

訪問看護による診療報酬が削減されたり、適正化されることで、PDハウス側の収益構造が大きく変わる可能性があります。
その結果として、施設運営に必要な費用の一部を月額費用や追加サービス費として利用者側に転嫁するという形で費用の見直しが行われる可能性も否定できません。

現時点では月額13〜21万円程度とされている利用料が、一定のサービス維持のために将来的に上がる可能性もあるという見方も出ています。

安心感の低下と転居・退去の動き

PDハウスはこれまで、「パーキンソン病専門」「医療と看護の連携が充実している」という点で、病状の不安を抱える高齢者やその家族にとって非常に魅力的な選択肢でした。

しかし、今回の問題によって、

  • 実際に提供されていたサービスと記録の乖離
  • 経営上の不正行為による信頼の失墜
  • 今後のサポート体制の縮小懸念

といった理由から、施設に対する信頼や安心感が大きく揺らいでいるのが現実です。

すでにSNSや掲示板、口コミサイトでは「転居を考えている」「違う施設への相談を始めた」という入居家族の声も出始めており、今後一定数の退去者が出る可能性は高いとみられます。

PDハウス(サンウェルズ)を発端に、難病や終末期患者への医療全体に厳しい目が向けられる

サンウェルズは内部統制の強化や再発防止策の実施を進めていますが、信頼回復には時間がかかると見られています。また、業界全体においても、訪問看護の適正な運用や診療報酬の請求に対する監視体制の強化が求められています。

今後PDハウスへの入居を検討する人への注意点

現在PDハウスを検討している方にとっては、今回の件を受けて「医療体制が本当に整っているのか」「信頼できるかどうか」を慎重に見極める必要があります。訪問看護やリハビリの内容や費用面、どんな制度でどんな計画に基づいて提供されるのかについても、ことこまかに確認しておきましょう。

PDハウスや紹介会社の説明では、「パーキンソン病の人の受け皿はPDハウスしかない!」というニュアンスで説明されることがありますが、それは紹介会社にとってもサンウェルズにとってもお金になるお客さんだからです。

それ以外の老人ホームでもパーキンソン病を患いながらも入居している人もたくさんいます。特定の病気に特化した老人ホームというのは目新しいもので、専門性が高いので良いサービスが提供されると思いがちですが、視野を広げていろいろな施設から選ぶことをおすすめします。

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