
有料老人ホームでは、入居者やその家族が施設の運営状況を把握し、意見を述べる機会として「運営懇談会」の開催が義務付けられています。しかし、実際には運営懇談会を開催していない施設もあるようです。では、運営懇談会を開かないことは基準違反にあたるのでしょうか?本記事では、運営懇談会の義務や代替措置、開催しない場合の影響について詳しく解説します。
運営懇談会とは?
有料老人ホームの運営においては、入居者やその家族が施設の状況を把握し、運営に関する意見を述べる機会を設けることが義務付けられています。これが「運営懇談会」と呼ばれるもので、施設の透明性を確保し、適切な運営を行うために必要不可欠な制度です。
運営懇談会の開催については、重要事項説明書や運営規程に記載することが求められており、記載がある以上、必ず実施しなければなりません。
運営懇談会の開催義務
運営懇談会の開催義務については、以下のような基準が定められています。
- 重要事項説明書・運営規程に開催を明記すること。
- 管理者、職員、入居者が参加すること。
- 外部の第三者(学識経験者や民生委員など)を加えることが推奨される。
- 入居者や家族に周知し、必要に応じて参加できるよう配慮すること。
- 入居者の状況、サービスの提供状況、施設の運営に関する収支情報を定期的に報告・説明し、入居者の要望を運営に反映させること。
これらの要件を満たさない場合、老人ホームの運営基準違反となる可能性があります。
運営懇談会を開催していない場合は違反?
運営懇談会を開催していない場合、基本的には運営基準違反となります。ただし、以下のような例外的な代替措置が認められています。
例外的な代替措置
運営懇談会の開催が困難な場合、以下の3つの条件をすべて満たせば、運営懇談会の代替として認められることがあります。
- 地域との定期的な交流を確保すること(地域住民や関係団体との交流を通じて透明性を確保)
- 入居者の家族との個別の連絡体制を確保すること(施設の運営状況を家族へ定期的に報告)
- 定期的に入居者やその家族の要望を聞く機会を確保すること(面談やアンケートを実施)
これらの条件を満たしている場合に限り、運営懇談会を開催しなくてもよいとされています。
また、定員が9人以下の小規模施設では、特に代替措置が認められるケースがあります。
コロナ禍における特例措置
新型コロナウイルス感染症の拡大により、対面での運営懇談会が困難な場合、一時的に「書面による開催」が認められることがあります。ただし、以下の要件を満たす必要があります。
- 運営状況や収支の報告書を入居者に一斉送付すること。
- 入居者の要望・意見を徴収するための意見書を送付し、返信用封筒を同封すること。
これにより、対面での開催が難しい場合でも、運営懇談会に代わる適切な意見収集の機会を確保することが求められます。
まとめ
- 運営懇談会の開催は義務であり、重要事項説明書や運営規程に記載されている以上、開催しない場合は基本的に運営基準違反となる。
- 小規模施設(概ね9人以下)では、特定の条件を満たせば運営懇談会の代替措置が認められる。
- コロナ禍などの理由で対面開催が難しい場合でも、書面による運営懇談会が認められており、これを実施しない場合は指針不適合となる。
運営懇談会を適切に実施しない施設は、透明性の欠如や入居者の不安を招く可能性があり、行政指導の対象になることもあるため注意が必要です。
もし運営懇談会を開催することもなく、運営に関する意見をする機会もないような老人ホームの場合には、入居者やその家族などの声に耳を傾けない体制であるだけでなく、介護保険の事業者として運営上にも大きな問題がある状況であることがわかります。運営懇談会を行う頻度は自治体により若干違いますが、少なくとも年1回は必ず行わなければならないものなので覚えておきましょう。